jeudi 8 septembre 2011

新学年が始まり、ヨーロピアンを感じる


Pr. Joachim Kurtz (Univ. Münster, Germany)


新しい学年が始まったというところだが、これまでの新鮮さはない。今日は淡々とセミナーを聞きに大学へ。演者はドイツはミュンスター大学のヨアヒム・クルツ教授。テーマは無脊椎動物の免疫機構を進化とエコロジーの視点から解析したもので、興味深いお話であった。

研究対象はカブトムシで、病原体に特異的な防御をするだけではなく、親が病原体で刺激されていると、その子の防御能力も増加するという。一見すると免疫能が遺伝しているように見えるが、実際には遺伝子を介したものではなく、何らかの物質が子に移動してそれが免疫能を直接あるいは間接に高めているのではないかとのお話であった。これまで雌の親からの免疫能の伝達は知られていたが、雄親にもその能力があることは彼のグループが見つけたもの。ただ、雌親と雄親の作用機構は異なるようである。

生きとし生けるものはこの世界に投げ出されている。免疫は投げ出されたものの生存に直接関わっている。試験管の中という謂わば綺麗な状態での解析から、実際に生きている環境にできるだけ忠実な条件での研究にも目が行くようになっている。ごちゃごちゃしていて解析が難しそうだが、それが生物の存在のありのままの姿だとすれば最終的にはそこに向かわなければならないのだろう。

お話の骨格がしっかりしていて、考えながら噛みしめるように話すので非常にわかりやすい。派手ではないが、地に足がしっかりとついているという印象を受ける。ヨーロピアンという形容詞が当て嵌まるのではないかと最近では思うようになっている。

以前に触れたかもしれないが、この会のディスカッションは1時間に及ぶことも稀ではない。会の前、科学者から哲学者へ転向した人として紹介されたので、新しい視点からいくつか問題点を指摘させていただいた。また、会のオーガナイザーの一人は、この9月からオランダで研究することになったという。若い人が簡単に(?)移動している様を見るのも気持ち良いものだ。これもヨーロピアンと言えないだろうか。



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